2010年12月2日木曜日

SWIFT


ここまで、キャッシュ・マネージメントの理論を見てきたので、今回から少しオペレーション部分に触れてみたいと思う。まずは海外送金には必須となるSWIFTについて触れてみたい。

海外送金に関わったことがある人なら、この「SWIFT」はお馴染みの言葉であると思う。なぜなら海外送金指示書には必ず記入するように銀行でうるさく言われるからである。では実際にSWIFTとは何なのか?

SWIFTとは英語で「速い」という意味があるが、金融業界で使われるSWIFTとはSociety for Worldwide Interbank Financial Telecommunicationの略で、国際銀行間通信協会のことをさす。この組織では、あらゆる銀行や金融機関(一部の多国籍企業)の間でやり取りされる金融関係の通信を世界的に扱う。

海外送金に関わる銀行間での通信は、殆どの場合、このSWIFTのネットワークを使って行われる。但しあくまでも情報の通信だけであって、SWIFTでは送金の決済は行われない。分かりやすく言うと、A社からB社にお金を送るのに、A社の取引銀行が現金を持ってB社の取引銀行に行く代わりに、EメールのようにSWIFTを使って、「A社からB社へこの日にこれだけの送金があります。こちらで送金手続きしたので、あとは入金手続き宜しく」と情報を送る、ということである。そしてこのEメールアドレスに当たるものが「SWIFTコード」や「BICコード」である。

実際の決済は、さまざまな決済システムを通して行われる。国によって、或いは送金の種類によって、そのシステムを使い分けることになる。但し、その処理はあくまでもこのSWIFTの情報を元に行われる為、ここの情報が間違っているとお金が行方不明になる可能性もあり、そこで銀行でうるさく「記入してください」と言われることになるのである。

実際にSWIFTメッセージには様々な種類が存在する。例えば、上記のような送金情報に関わるものであれば、受け取り銀行宛に送るメッセージ(MT103)や、受け取り銀行以外の間に入る銀行(コレスポンデント銀行)に送るメッセージ(MT202)などが代表的なものである。それ以外にも口座情報をSWIFTメッセージで送るのもよく使われる方法である。例えば、銀行の基幹システムで記帳された口座の入出金情報をEバンキングで反映させるのに、SWIFTメッセージを使うのである。

これを応用したのが、色々な銀行にある口座をまとめて管理するEバンキングである。多国籍企業の場合、どうしても取引銀行数が多いので、各銀行のEバンキングでそれぞれ口座管理をしていると、それだけですごい事務作業になってしまう。各銀行それぞれのユーザーネームとパスワードの管理だけでも頭痛の種になるだろう。これを例えば銀行Aでまとめて管理することにしてしまえば、その他の銀行から銀行Aに各口座情報をSWIFTで送ってもらえばいいのである。最近は大手の銀行はどこもこのようなサービスを提供しているので、なかなか便利といえる。当然、その他の銀行になった場合は、メインで使ってもらえないわけであるから「しぶしぶ設定の依頼をうける」ことになるだろうが・・・(笑)

これをさらに発展させたものが、企業用のSWIFTサービスである。分かりやすく言うと、口座管理や送金指示などの銀行サービスを銀行のEバンキングを使わずに、いきなりSWIFTを使って企業側でやってしまおうというものである。つまり、企業のシステムをSWIFTにあわせて1つ作ってしまえば、口座管理も、それ以外の取引も、理論上は簡単に出来てしまうということである。SWIFTはこれまで金融機関だけが使えたネットワークであったが、これを企業側にも開放して以来、その数はますます増えている。大企業から率先して導入していたこのサービスだが、現在SWIFTのホームページによると、マイクロソフト、インテル、GE、デュ・ポンなども使っているようである。

ただ銀行員時代、このSWIFTサービスの初期設定に関わったことがあるが、やはりシステムとはそう一筋縄でいくほど簡単ではないので、設定にはかなりの時間と労力を要した。故に、その時間と労力をかけてでも立ち上げる価値のある規模がなければ、やはり現実的ではないのかというのが、これまで見てきた中での正直な感想である。

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2010年10月25日月曜日

運転資金マネージメント2

前回述べた通り、運転資金がプラスであっても流動性の質が問われる、という部分をさらに掘り下げてみたいと思う。

流動性という意味では、バランスシートの上から順に、下に行くほど流動性が高い。つまり、在庫よりも売掛金が、売掛金よりも現金の方が流動性が高いことになる。すなわち、いかに早く在庫を売掛金にし、売掛金を現金にするか、ということが重要となってくるのである。この現金化されるまでの期間のことをキャッシュ・コンバージョン・サイクル(Cash Conversion Cycle = CCC)という。

このCCCはサプライヤーから購入して支払うまでの期間、顧客からオーダーを受けてからその支払いを受け取るまでの期間、及び、原料を受け取ってから最終商品を顧客へ届けるまでの在庫期間によって決まる。分かりやすく言うと、「在庫期間をなるべく短くし、顧客からは売掛金をなるべく早く回収し、買掛金は支払期日のぎりぎりする」ということである。

例えば、在庫期間を短くする為に考えられた代表的なのがジャスト・イン・タイム・システムである。原料が必要になるその時にぴったりあわせてサプライヤーに原料を配達してもらう、というシステムである。この辺はストック・コントロールの分野にあたる。また支払いについては、受け取るほうも、払うほうも、支払い条件、方法、期間などが鍵となってくる。

ちなみに支払いを効率的にする為に考えられたのがペイメント・ファクトリーやネッティングである。ペイメント・ファクトリーはその名の通り、グループ会社の支払いをペイメント・ファクトリーで纏めてするというものであり、ネッティングは各支払いを相殺して、差額(ネット)分だけ決済するというものである。

ここからは会計分野になってくるが、実際のCCC計算方法を紹介する。

CCC=在庫回転期間+債権回転期間-支払勘定回転期間

在庫回転期間 = 在庫平均 / 売上原価 X 365
債権回転期間 = 売掛金平均 / 信用販売 X 365
支払勘定回転期間 = 買掛金平均 / 信用購入 X 365

では例を使って計算していく。

右の例は必要な数字だけBS及びPLから抜き出したものである。便器上、売上は全て信用販売、原料の購入は全て信用購入とする。

在庫平均 = (300 + 406) / 2 = 353
在庫回転期間 = 353 / 2,272 X 365 = 56.7日

売掛金平均 = (240 + 273) / 2 = 256.5
債権回転期間 = 256.5 / 2,681 X 365 = 34.9日

買掛金平均 = (221 + 314) / 2 = 267.5
信用購入額 = 2,272 + 406 - 300 = 2,378
支払勘定回転期間 = 267.5 / 2,378 X 365 = 41.1日

CCC = 56.7 + 34.9 - 41.1 = 50.5日

つまりこの例に使った会社は原料が使える現金化されるまでに平均50.5日かかるということである。



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2010年9月28日火曜日

運転資本マネージメント

運転資本(ワーキング・キャピタル)とはビジネスを「運転」していく上で必要な資本を指し、流動資産と短期負債との差額のことである。短期負債は企業の支払い義務であるから、その義務を果たして尚且つビジネスを運転するのにどれだけの現金、及び現金化しやすい流動資産がまだあるか、ということであるから、運転資金がプラスであることが好ましいのは言うまでもない。

実際に流動資金は在庫、売掛金、現金(含:有価証券など)から成り立っており、短期負債は買掛金とその他ローンなどから成り立っているので、運転資金マネージメントをどのような戦略でするかによって、現金や在庫の量、顧客の支払い条件、業者への支払い条件などが影響されることになる。

では例を使ってそれらの詳細を見ていく。下の表はA社とB社のバランスシートである。












この2社の運転資本は
A社 = 60 + 40 + 100 - 30 - 50 = 120
B社 = 125 + 130 + 5 - 100 - 40 = 120

このように全く同じである。では違いは何か?
1.A社の運転資本は現金保有量が大きい為、流動性が高い。つまり、急な支払いがあってもA社はすぐに支払いができるのに比べ、B社は売掛金の回収に依存せざるをえない。

2.A社の買掛金は30で、B社は100である。つまりB社のほうが支払わなければならない請求書をたくさん抱えていると言うことである。よってB社はA社よりここでも流動性が低いことになる。

すなわち、運転資本がプラスであっても、流動性の「質」も問われるということである。実際にはこの質はバランスシート上の5つのアイテム(在庫、売掛金、現金、買掛金、短期ローン)によって決まる。現金についてはキャッシュ・マネージメントで、短期ローンについてはコーポレート・ファイナンスのマッチングで触れているので、ここでは在庫、売掛金と買掛金について見ていく。

在庫にはキャリーイング・コスト(carrying costs)と呼ばれる在庫を保有・維持するのにかかる費用と、ショーテージ・コスト(shortage costs)と言って在庫不足によって生じる機会損失の二つのコストがある。但し、キャリーイングコストを削減する為に、在庫を減らしすぎて在庫がなければショーテージ・コストが生じ、それを避ける為に在庫を増やすとキャリーイング・コストが増加するというように、この二つのコストは互いに対立する。すなわち両方のコストが最小になるように多すぎず、少なすぎず在庫を持つ必要があるということである。

では売掛金と買掛金については次回さらに詳しくみていきたい。



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2010年9月20日月曜日

キャッシュ・プーリング2

前回に引き続き、今回はキャッシュ・プーリングのメカニズムについて述べたい。

各銀行が提供するシステムは、サービス名称や会計などの処理方法によって資金の認識方法が変わってくる為、一見違うサービスに思えることもある。しかしながら過去3行で働いた経験によると、どの銀行でも基本の部分は同じであり、いたってシンプルなものである。

ではこの基本部分とはどんなものか?
これは一般に、スィープと呼ばれる自動的に資金移動するサービスとプーリングと呼ばれるいくつかの口座残高を相殺するサービスの2種類だけで、後はこれを企業の形態やニーズにあわせて色々組み合わせていくだけである。ではこの2つの詳細を見ていく。

スィープ
二つの口座をリンクさせて資金移動するもの。大抵はオートスィープと言われるように、自動的に決められた口座が決められた残高になるように、資金が移動するものである。

図1
例えば左の図1のように口座Aと口座Bがリンクしていて、経常口座が口座Bとする。すなわち口座Bの残高は日中絶えず変化する。一番基本的なスィープは口座Bの毎日の最終残高がゼロになるように設定される。すなわち口座Bの残高がプラスなら全資金が口座Aへ送られ、口座Bの残高がマイナスなら口座Aからマイナス分をうめる資金が届く仕組みである。

口座Aと口座Bの所在国が違えば、クロスボーダー(国境を超えた)・スィープと言われる。当然スィープを自動で起動させるには銀行のシステムを使うわけであるから、銀行のシステム上、出来ることと出来ないことがある。例えば、口座Bがある国にプーリング提供銀行の支店、又は提携銀行がなくてオート・スィープが設定できない場合、口座Bから口座Aへ、又は口座Aから口座Bへ普通に送金すればマニュアル・スィープとなる。但し一々送金を起こすのが面倒な場合には、このような細かいシステムの差がプーリング提供銀行を決めるポイントになることもある。

また銀行によっては、口座Bの残高をゼロだけでなく自由に設定できるサービスを提供している。例えば、口座Bの残高を絶えず1,000ユーロにしておく、といった具合である。また口座の記帳が煩雑になるので、スィープの最低金額を決めておけるサービスもある。例えば、スィープの最低金額が5,000ユーロだった場合、口座Bの残高を毎日ゼロにするのでなく、5,000ユーロ以上になるまで待ってからスィープされるということである。またこの例の前者と後者を組み合わせると、口座Bの残高が6,000ユーロ以上になって始めてスィープされ、口座に1,000ユーロ残る。

では法律、及び会計的な視点からこのスィープを見ていきたい。
もし口座Aと口座Bの名義が同じだった場合、法律上も会計上も何も変わらず、名義会社の現金として認識されるだけである。ただ口座のある場所が違うだけの話である。ところがこの名義が違うと「資金移動の理由」が必要になってくる。大抵はグループ会社内でスィープとプーリングを設定するので、この場合資金が動く方向によってグループ会社に対する「貸付」と「借入」が発生することになる。すなわち会計上、別項目になるわけである。当然それに対する書類を整備しなくてはいけないので、導入時のこの手の契約書は大抵煩雑極まりない。また財布の紐を握られることによる抵抗(分かりやすく言えば、奥さんに1円単位でお小遣いの出入りを管理されている旦那さんのようなもの)もあるので、通常はなかなかスムーズに導入できないのが現状である。

とはいえ連結決算で考えると、グループ間ローンは相殺できるため、最終的にはバランスシートを圧縮することが出来、故にあらゆるファイナンシャル・レシオも向上する、という効果もある。

プーリング
大抵はスィープで各地から集めてきた残高を相殺するために設定されるのがプーリングである。
図2

イメージとしては左の図2のような感じで、赤い線で囲ってある口座が相殺される。口座名義はスィープの所でも述べた通り、どの名義になっていても良いが、要はその相殺を銀行のシステムで出来るか、出来ないか、というだけである。

大抵の銀行の場合、相殺した最終残高がマイナスであれば、オーバードラフト(当座貸越)やローンとして認識する為、あらかじめファシリティ(貸越枠)を設定しなければならない。またプーリング参加のメリットを出す為に、各口座に金利をつけて参加会社に還元したりするが、この辺も銀行によって金利の受払をどの口座でするか自由に設定できたりすることもある。

何年か前まではこのプーリングは通貨ごとに相殺していたが、銀行によってはさらに進めて多通貨で相殺出来るサービスもあり、そのシステムを上手く使って安い金利で資金調達をして、高い金利で引き出すといったキャリー・トレードをしている企業もある。

またアジア地域では現地通貨の移動に様々な制限がかかるため、これらを動かさずに相殺できるシステムを持っている銀行もある。これをプーリングを呼んでしまうのは規制などの観点から賛否の分かれる所であるが、多国籍企業グループとして各グループ会社の残高を相殺できるという意味では同じ類のサービスであることには違いない。

実際にどういったサービスがその企業にあっているのかは、その企業の事業形態や地域、その他のニーズによる。但し、これらの仕組みは理論上は単純だが、銀行システム上はかなりシステム開発を必要としたりする為、昨今ではシステムを持っている銀行にサービスのアウトソースする銀行もでている。とはいえ、システムに対する依存が大きいこのようなサービスの場合、システムトラブルがあると銀行側で行員がマニュアルで訂正したり(これがまたさらなるミスを生んだりする訳だが・・・)、ということも度々起こるため、目先の損得や、これまでの銀行との付き合いだけでなく、やはりシステム開発を惜しまず安定的なサービスを提供でき、それらのフォローをしっかりしてくれる銀行を選んだほうが得策といえる。特にこのようなサービスを一度導入するとなかなか簡単に違う銀行に変えられないことから、なおさら、である。


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2010年9月10日金曜日

キャッシュ・プーリング1

キャッシュ・マネージメントと銀行で言えば、そのままプーリングを指す事が多い。ではプーリングとは何か?スィープと呼ばれる機能なども含めて細かいメカニズムは後述するとして、まずはプーリングの概略から述べていく。

まずは何もしていない状態の多国籍企業の財務状況を想像して頂きたい。多地域でそれぞれの財務担当者がそれぞれのオペレーションに必要な資金管理をしているとすると、分散されたマニュアル・オペレーションは企業にとって運転資金のコントロールが効きにくいという事を意味し、最終的に企業の流動性へ少なからず影響を与える。これを解消する為に考えられたのが前回でも述べたキャッシュ・マネージメントの集中化である。

この集中管理をする為の銀行商品がいわゆるプーリングやスィープなどと呼ばれるものである。実際にプーリングは、多通貨のキャッシュ・ポジションを自動管理できる為、コスト削減ができる効率的な運転資金管理ツール、又は流動性管理ツールなどと言われる。

ではこの様なシステムを必要とするのは一体どんな企業なのか?実際に銀行がターゲット顧客としているのは、多国籍企業で拠点が世界中にあり、多地域にプラスとマイナス両方のキャッシュ・ポジションをもっている企業である。これらの大企業が導入した際のリサーチでは、為替及び送金手数料のおよそ1.5%が削減できたという結果や、6ヶ月でシステム導入費用を取り戻せるなどという結果もある。しかしながら近年のリスク・マネージメント強化の風潮から、財務効果がなくとも管理体制の観点から導入している企業も増えているのが事実である。

実際に銀行側も、昨今の情報技術や電気通信などの発達により、これらの商品をより洗練されたものに開発してきている。例えば、多通貨を纏めて管理(相殺)できる多通貨プーリング、参加地域の拡大(東欧、アジアなど)、自動機能の拡大、などが最近目立ってきている傾向である。これは多国籍企業がますますグローバル化し、扱う通貨や地域が拡大していること、そのニーズがさらに高まっていること、またその影響か外為法や税法の簡素化、または国際共通化などが理由として考えられる。

では次回はそのメカニズムについて触れたいと思う。


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2010年9月7日火曜日

キャッシュ・マネージメントの集中化

業務の集中管理(セントラライゼーション)は企業の規模が大きくなればなるほど必要とされることである。管理体制がきっちりしていない所に事業の拡大をすると、大抵どこで何をやっているのか把握できなくなってしまう。しかし集中管理をすることで、さまざまな業務のプロセスを社内で統一でき、これによって社内体制の透明化にもつながるのである。つまり、最近の企業が存続するのに必要条件とされるリスク管理やコンプライアンスという分野にも好条件をもたらすため、多国籍企業のキャッシュ・マネージメントの集中化は好まれる傾向にあると言える。

但し、集中管理にもメリットとデメリットが存在する。ここではその両面をあげてみたいと思う。

メリット

  • 情報が集中化することで、タイミングよく、効率的に社内のキャッシュを管理できる。
  • 扱う管理規模が大きくなる為、金融機関などからの情報提供やサービスが向上する。
  • いざと言う時の為の現金を各拠点で管理する必要がなくなるので、会社全体の現金保有量を削減することが出来る。
  • キャッシュ・フローがまとまることで、フローの波が相殺されることで安定し、流動性が向上する。
  • 安く調達、高く運用できる場所を選ぶことができるので、支払利息を削減し、受取利息を増加させることが出来る。
  • 市場、送金手数料、為替リスク、税金優遇などを比べ、一番条件の良い場所を選ぶことができる。
  • 会社全体で純利益を上げるための財務管理が纏めてできるようになる。
  • 知識や経験の共有がさらに向上する。
  • 同じ業務量を少人数で出来るようになり、人件費や経費削減につながる。
  • 赤字拠点を黒字拠点で補って相殺できる。
  • 人為ミスのリスクの削減
  • 会社の財務ポリシーの管理が容易になる。
  • さまざまなファイナンシャル・レシオが向上するため、信用格付けや企業価値が向上する。


デメリット

  • 収益の大部分はビジネスにおいて作り出されるので、財務部分の集中化だけでは効果は限られる。
  • 各地での情報が減り、さらにその場所ごとの好機やメリットが配慮されない。
  • 現地でのノウハウの蓄積が減少し、キャッシュ・マネージメントの重要性が放念される。
  • 権限がトレジャリー・センターに移行するということは、財布の紐を親に握られるようなものであるので、現地では受け入れられにくい。
  • 現金が一つの銀行に集まることで、銀行取引が減り、競争原理が働かなくなる。
  • 銀行の売掛金受取口座を変えることが難しい為、なかなか全ての現金の同日付けバリュー管理(無駄に現金を普通口座に寝かせて一晩こさないこと)は難しい。
  • サービス提供銀行がよくなくても、同じ理由で簡単に変えられない。
ざっと見ただけでもこれだけある。現在、いわゆる大企業と呼ばれている会社はなんらかの形で現金の集中管理をしている。色々な規制などを鑑みて、大抵は地域ごと(アジア、欧州、アメリカなどのよう)に分けてそこで集中管理した上で、世界全体を管理するという形が多い。大抵の銀行の場合、この地域ごとの集中管理をするサービス(スイープ、プーリング、ネッティング、金利優遇商品など)を提供しているが、中には1つ上の世界ベースの管理を売り物にしている銀行もある。また世界統一管理する為に、銀行間で使うSWIFT(送金や情報のやり取りの為のシステム)を使って自社で集中管理する会社も出てきている。

これまでのトレンドは、大企業から始まったこのキャッシュ・マネージメントの集中化がもう少し規模の小さい中企業へ浸透していった所に思える。但し、この集中管理を導入してかなり経つ企業では、デメリットを少なくする為に試行錯誤しているのが現状である。


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2010年8月10日火曜日

キャッシュ・マネージメント

銀行で「キャッシュ・マネージメント」というとネッティングやプーリングなどの多国籍企業向けの流動性管理商品を指す。よって企業財務担当者も銀行員も「キャッシュ・マネージメント」といえばそれらの商品のことしか思い浮かべないが、実際のファイナンス理論では、企業のビジネス・オペレーションに必要なキャッシュ(現金)を如何に最適なレベルに保つかということを指すので、もっと幅広く考える必要がある。

では実際にキャッシュが必要な理由を考えてみる。まず、企業が活動を続けるにあたって必要な日々の支払いの為。これはトランザクション・モーティブ(Transaction Motive)と呼ばれるものである。次に予期しない出費に備える為。これはプレコーショナリー・モーティブ(Precautionary motive)。さらに、M&A(合併&買収)のように、さらなる経済価値を生み出す投資をする為。これがスペキュラティブ・モーティブ(Speculative motive)。最後にお金を預ける代わりに銀行などから情報を得る為。コンペンセーション・バランス・モーティブ(Compensation balance motive)。これら4つのモーティブ(動機)が一番良く知られているものである。

では実際のキャッシュ・マネージメントとはどのようなものか、以下詳細を見ていきたい。

流動性管理
これはキャッシュ・ポジション管理を指すが、日々のポジション管理であるキャッシュ・バランス・マネージメントと、もう少し長い期間のポジション管理であるファンド・マネージメントの二つに分けることが出来る。前者は、受取・支払利息や口座残高を最適に保つ為、口座を日々モニターし管理することであり、後者は投資や融資などある期間をまたがるポジション管理である。

キャッシュ・フロー管理
キャッシュ・フローとはその名の通り、お金の出入りのことである。つまり支払いと受取りを如何に管理するかと言うことである。具体的には、送金数、及び送金手数料を減らしたり、仕向送金(支払)を遅らせ非仕向送金(受取)を早めることでキャッシュ・フローを向上させたりすることである。これは売掛金と買掛金の管理であり、言い換えれば運転資金管理ともいえる。

その為にはキャッシュ・フロー予測が非常に重要となる。残念ながら多くの会社でキャッシュ・フロー予測は信頼度が低いと思われている。だがよく考えて頂きたいのは、企業の資金の動きとはすなわちその企業のビジネスが作り出すものであり、実際には予測可能な内部情報なのである。もっと言えば、金融市場や経済の傾向などをまとめた情報よりも安上がりで確実なのである。正確な予測はさまざまな手数料を削減し、収益を上げることに貢献する。実際に予測を向上させるために「受取・支払の分析」、「統計分析」、「貸借対照表分析」などが有効と言われている。

予算
多くの会社で「予算」は独立して扱われることが多い。元々予算とは企業が何に支払い、それを如何に支払うかということである。つまりこれまで見てきたコーポレート・ファイナンス(資金調達法)、ファンド・マネージメント(流動性管理)、運転資金管理(キャッシュ・フロー管理)などである。またファンド・マネージメントにはスペキュラティブ・モーティブのように、さらなる経済価値を生み出す投資(つまり新しい企業買収やR&Dの為の予算)だけでなく、価値を生まない投資からの撤退(資産売却)も含まれる。またキャッシュ・フロー管理の中のキャッシュ・フロー予測も同義であるといえる。

ネッティングやプーリング
上記に述べたキャッシュ・マネージメントを効率的にするツールがネッティングやプーリングである。基本的にはキャッシュ・マネージメントを効率的にしなければやっていけない規模の会社でないと、このツールを使う意味はあまりない。これらのツールは規制、税法、会計法など障害が多いため、導入に(システムによっては導入後も)手間とコストばかりがかかるからである。実際に、これらのツールの謳い文句は支払利息や為替コストの削減、支払数とその手数料の削減、短期投資リターンの向上、リスク・マネージメントの向上など色々あるが、どこのサービスプロバイダーをどのように使いこなすかによって、随分その効果も変わってくるのである。よって導入前に、何をどうしたいのか、目的をはっきりさせておく必要がある。

最後にまとめると、企業にとってのキャッシュ・マネージメントとは現金と近い将来現金化されるアイテムのフローの管理であり、最適なキャッシュ・マネージメントとは現金の残高を最低限に保ちながら、リスク増加させたり、収益を減少させたりすることなく投資した(或いはこれから投資する)資産からのリターンを増やすことである。


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2010年8月6日金曜日

取引銀行

今日のキャッシュ・マネージメントを語る上で、取引銀行は重要な位置を占める。企業のお金の大部分は銀行口座にあるのだから、当然と言えば当然であるが、実際にはそれ以上の理由がある。

まず一番にあげられるのが融資だろう。企業の主な調達手段でもあり、邦銀の収入のメイン所でもある。元々日本には「メイン銀行」という言葉が存在する通り、贔屓に取引する銀行をがっちり固めているのが大抵の上場企業の現実である。これは銀行が株主であるという現実もあり、フラフラ別の銀行に浮気ができないシステムである。そういう力関係もあってか、別世界から銀行に入ると「どちらがお客さんですか?」と思えるような企業財務担当者と銀行担当者の関係も存在するのである。基本的にバブル経済崩壊後、株の持合の解消や、銀行の貸し渋りなどにより、企業の方も「いざと言う時に銀行はアテにならない」という意識を高めており、積極的に違う銀行との関係を築こうとする動きもある。とはいえ、外銀の営業職につくとこの「メイン銀行」の壁はかなり厚いと言える。

企業の財務担当者に話を聞くと、大企業であるほど取引銀行数が多い。これは企業が大きくなれば、事業ごと、支店ごと、子会社ごと、とねずみ算式に銀行数が増えていくからである。とある日本企業では欧州だけの合計で60もの取引銀行があるそうである。各生産拠点、各販売拠点ごとに4~5の銀行と取引をしていればそれ位になるし、それが必要数であるとのことであった。ここまでの規模になっても数が減らせないのなら、如何に効率よくそれらを管理するかがポイントになってくる。技術の進歩により、銀行のシステムもどんどん進化しており(一部システムに投資していない銀行もあるが・・・)、大抵は別銀行の口座もコンピューターで一元管理が出来るようになってきている。

一方でもう少し規模の小さい企業の場合、逆にものすごく少ない数の取引銀行しかない場合もある。聞くところによると、バブル前まではそれでも二桁の取引銀行があったのに、邦銀がどんどん合併していって、口座が統一されてしまってこの数になってしまったとのこと。邦銀だけでは心配なので、逆に外銀との関係も築きたいとのことであった。何もしなくても様々な銀行が営業に来る大企業とは全く逆の悩みである。また取引銀行数が少ないと言うことは、享受できるサービスに限りがあったり、そのコストがものすごく高かったりもする、ということである。

銀行も勿論ボランティアで商売をしているわけではないので、儲かる客と、そうでない客に対してサービスに差をつける。特に外銀の場合それが露骨なので日系企業は戸惑う場合が多い。「邦銀は親切なのに、外銀はサービスが悪い」というのは良く言われることで「外国は文化が違うからサービスがないのではないか?」と思われがちだが、実際には銀行に儲けさせない会社だからサービスを享受できないというのが事実である。銀行に儲けさせてないのにサービスがいい場合は、その企業を足がかりに日本マーケットに参入したいなどという下心があるからである。

また取引銀行の名前や格で企業の信用力をみたりするからと言う理由で、銀行も選ばないといけない。銀行で働いていると他行の得意分野、不得意分野が良く見えるが、不得意分野で提供できるサービスも明らかに他より劣るのにも関わらずその分野のセールスを伸ばす銀行があったりするが、それなどまさに「銀行の知名度」で決めた最たる例であろう。また会社によってはお金を払って銀行との関係を続けていることもあるが、これなども会社の信用度を維持する為の必要経費と言える。

このように見ていくと、取引銀行数は多すぎず、少なすぎず、かつ適度に銀行を喜ばせる収入も与えながらも、払いすぎず、という微妙な管理が必要なのである。投資の世界では「全部の卵を一つのかごに入れるな」とよく言われるが、取引銀行も似たようなことがいえる。今回世界全体に影響を及ぼした金融危機なども良い例だが、何かあった時でも必ず逃げ道があるのは企業としての強みになるであろう。その意味、世界で有名な大企業(含:外資)は、各銀行の強みを見定めた上で、上手に銀行を使い分けていると言える。



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2010年8月3日火曜日

カントリー・リスクの実例

実際に通貨に関する規制は財務担当者の頭痛の種である。例えば露ルーブルなど典型的な例であるが、2年前の銀行でかかわった時には露ルーブルの国外持ち出しは禁止、ロシア外からの資金調達も禁止、おまけに外貨の利息受取はロシアの銀行を通さないといけないとか、それはそれは細々と色々な規制が存在した。言ってみればロシア政府の考え方は、「ロシア内でビジネスをするにはその利益を100%ロシアに還元しろ」ということに尽きると思われる。その規制の目をかいくぐって色々知恵を絞ったものである。とある企業は弁護士や会計士を使ってありとあらゆる質問をつくり(勿論、自分達がやりたい方向性に誘導するものであることは言うまでもない)、その正式回答を何かあった時の為の保険として一応逃げ場を作ってから、資金移動スキームを作っていた。

さらにその時に聞いた話であるが、ロシアの税務署では不正をみつけていくら罰金を課したかによって、その税務所役人のその年のボーナスが決まると言う、冗談のような話もあるらしい。では実際にはどうなるかというと、とにかく色々難癖をつけて罰金を取り立てるそうである。最終的に企業は納得がいかず不服を申し立て、結局全部罰金を取り戻すと言う構図が成り立つ。役人もそこのところを知っているから、自分のボーナスアップの為に当たり前のように罰金を請求してくるらしく、怒る気も失せる様な話である。

またとある企業は船舶関係であったが、大体船はギリシアがらみが多いようである。いわゆる船のキャプテンとやらがギリシア人ということである。そうすると公然と袖の下を要求されるそうである。勿論渡さないと仕事にならないが、そのような現金に請求書や受領書がもらえるわけでもなく、いかに処理するかがその会社にとっては問題であった。仕方なく税務署にその理由を説明し、毎年いくらまでなら賄賂として処理してもよいか金額を設定してもらったという嘘のような本当の話である。

またあるIT関連の企業はインドにかなり大きい子会社を持っていた。インドもまたロシアと同じく通貨の移動が難しい所で有名である。ただこの企業の場合はそうとう大きい子会社でかなりの雇用をインドで生み出しており、その自負もあった。つまりこの企業とインド政府の関係は企業として政府に圧力がかけれる位(と実際にその財務担当者が言っていたそうだが、そこには白人優位主義があるのではないかと思うのは私がアジア人だからだろうか・・・)であり、結局規制の例外を堂々と取り付けていた。この辺の交渉の図々しさ(?)を謙虚な日本人はもっと見習ってもいいのかもしれない。

あと周知の事実がアジア内での不法コピーである。一時期安い労働力を求めて全てを中国の工場に移し、最終的に最新技術をコピーされて多大な損害を受けた日本企業は、最新製品は日本での生産に戻したと言う話も聞くが、デジタルのコピーは防ぎようがない。例えばマイクロソフトの最新ウインドウズなど発売されてしまえば簡単にコピーできてしまうからである。これらの不法コピーによる売り上げのロスは毎年相当額(ソフトウエアだけで毎年3000億ドル強のアジア内の売り上げロスとか?)になるそうである。日本のアニメなども同じように不法コピーされインターネットで垂れ流し状態になっているが、一方でそのおかげで国際的な日本アニメブームを生み出したという反論もある。その真偽はともかく、コピーできてしまう商品の場合、不法コピーを取り締まるより別のビジネスモデル(例えばiTunesなどで簡単だが安価でCDやビデオなどダウンロードできるシステムなど)を考える時期に来ているともいえる。



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2010年8月2日月曜日

取引リスクヘッジの実例

為替リスクのうち、取引リスクヘッジをするかしないか判断の基準のひとつなる計算方法を紹介する。

会社Aが90日後に€100,000必要とする。また現時点の90日フォワードレートが1€ = $ 1.3とする。90日後のスポットレートが1€ = $ 1.24 ~ $1.38の間で動くと仮定、そのレートになる確率(確率分布)を下の表のよう(コラム左1&2列目)にしたとする。

90日フォワード契約をした場合、€100,000を買うのに$130,000 必要となる(コラム左3列目)。またフォワードではなくスポットレートで取引した場合、予想されるレートごとに計算するとコラム左4列目のようになる。最後のコラム左5列目はフォワードとスポット取引の差額となる。

次にこの差額がどの割合で実際に起こるかを計算する。例えばコラム1行目はスポットレートが$1.24 となり、スポット取引の方がフォワードより$6,000お得になる確率が5%となる。(5% x $6,000 = $300)
全てのレートを同じように計算してその合計を出すと次のようになる。
∑ = 5% ($6,000) + 10% ($4,000) + 15% ($2,000) + 20% ($0) + 20% (-$2,000) + 15% (-$4,000) + 10% (-$6,000) + 5% (-$8,000) = -$1,000

つまりこの確率分布で行くと、フォワード契約をしたほうが$1,000お得となる可能性があるということになる。またスポットの方がコスト安となる確率はこの場合30%(5% + 10% + 15%)となるので、フォワード契約はヘッジ方法として有効な手段と言える。但しこれはあくまでも確率であり、実際にはどうなるかは誰にもわからないのが為替市場である。よってこのような計算が役に立つのかと言われれば身も蓋もないが、判断の一基準としてこういう方法もあるということを知っておいて損はないだろう。



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2010年8月1日日曜日

為替リスクヘッジの実例

しばらく理論が続いたので、今度は実際に企業がどのようにリスクヘッジしているのか、銀行員時代にみた分かりやすい例を使って見ていきたい。

オランダのとある欧州統括販売会社では、仕入が米ドル、売上がユーロとなっていて、この米ドルは社内レートに基づいて決済されていた。つまりいつも米ドルが不足していて、ユーロから米ドルへの為替が必要であった。

この会社では社内レートより実際の為替レートが良くなった時を見計らってはフォワード契約をしていた。そのフォワードも割合を決めて仕入れの総額に対して何%は1年、何%は2年、何%は3年と。私が銀行員としてかかわった時期の最高のフォワード契約は3年半。但し、為替レートがさらに良くなるかもしれないという期待も見越して、何%かそのまま残してはスポットと決めていた。

この方法で行けば、取引リスク、及び一部の経済的リスク、換算リスクを回避できることになる。完璧なリスクヘッジは存在しないが、この会社のようにしっかりした方針を決めてヘッジをするのは有効な方法と思われる。



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2010年7月25日日曜日

財務リスク・マネージメント 3

では次にこれまで見てきた為替リスク利率リスク以外で考慮しなければならないリスクをみていく。代表的なものはカントリー・リスクである。

カントリー・リスクとは将来的にその国の環境が企業のキャッシュ・フローに与えるリスクの事を指す。具体的には戦争、テロ、スト、政治危機、貿易や通貨の規制変更などによって影響されるキャッシュ・フローや発生する費用のことである。

実際にカントリー・リスクは政治要因(または政治的リスク)と財務要因の二つに大きく分かれる。政治的要因には次のようなものがあげられる。

消費者マインド
地元消費者の親会社所在地に対する考え方、或いは自国製品を優先する考え方など。例えば、1980年代アメリカで起こった日本バッシングや2005年中国での反日デモなどでの日本製品不買運動などが代表的なもの。また国産牛肉など日本産が外国産より良いとされる考え方なども典型的なもの。

地元政府の方針
環境汚染に対する厳しい規制の施行や、法人税や源泉税の引き上げなど。分かりやすい例は2004年のEUからマイクロソフトに対する4億9700万ユーロの制裁金の支払い命令。これはウインドウズのプラットフォームにウインドウズ・メディア・プレイアーをあわせて販売したことに対し、消費者の選択肢を狭め競合相手の販売経路を奪うとの判断。

通貨の兌換不能、及び送金ブロック
通貨によってはその国の方針として他通貨に自由に交換できないこと。同じく国外への送金、外国からの送金もできなかったり、制限があったりすること。先進国ではあまりないが、発展途上国では一般的である。そのような国に子会社を作った場合、親会社に配当するのが難しい為、再投資して利益をその国にとどめざるを得ない。すなわちそれが狙いの規制である。一方で、その国の雇用拡大などで経済に貢献している場合は交渉次第で例外も作れる場合もある。

戦争やテロ
中東で戦争が起こると石油の値段が上がり、運送料や電気代などに反映する。また2001年の9.11後、西洋の旅行者は減り、旅行産業はかなりの打撃を受けた。

官僚主義や賄賂
お役所主義と国際ビジネスは直接関係ないように思われるが、官僚主義が強い国ではかなりの問題になりうる。例えば、1990年代初めの東欧では国際ビジネスの最たる障害がこの官僚主義だったと言える。また公然と賄賂を要求される国では、賄賂なしでは公共事業にありつけないなど、障害は大きい。国別の不正度具合をランキングしたものは最近ではかなり簡単にインターネットで手に入る。(リンク

一方カントリー・リスクの財務要因とは、現在及び将来的なその国の経済状況である。経済状況が良くなければ消費者需要も伸び悩み、その国でのビジネスは成り立たない。その指標となるのが、利率、為替レート、インフレーションである。

さらにカントリー・リスクはマクロとミクロに分けることが出来る。経済と同じく、マクロはその国全体のリスクで、ミクロは企業特有のリスクである。これを政治要因、財務要因ごとに分けて分析する必要がある。例えば、ある国の経済状態が余り良くなくて、自動車会社が自家用車を売ることを期待できなくても、軍事用や警察用の車で政府から信用できる契約を持っていれば、カントリー・リスクはかなり限定されるからである。

実際には、関係項目を書き出して採点したり、公表されている様々な資料を集めて平均値をとったり、重要項目とそうでない項目によって比重を変えて採点したり、回帰分析(売上成長率とGDP成長率の関係など)したり、キャッシュ・フロー予測をシナリオごとに作ってそのNPV(正味現在価値)を計算したり、色々な方法でカントリー・リスクを数値化することができる。但し、リスク全てを数値化できるわけではないし、実際にリスクが高いことが分かっていても将来的に何が起こるかは起こるまでわからないのが普通である。またどういった要因がどれだけ重要かはどの国でどのようなビジネスをするかによっても変わってくる。つまり独自にカントリー・リスクを分析し、絶えず監視しておくことが重要なのではないだろうか。また、何かあったときに最小限のダメージに抑える為のシナリオを作っておいて、投資を最小限に抑えて短い期間でキャッシュ・フローを回復させる、など普段から十分な準備をしておくのも有効である。さらに持ち株100%の子会社と言う形ではなく現地企業とのジョイント・ベンチャーを設立したり、いざと言う時の為の保険や、バック・トゥ・バック・ローン、プロジェクト・ファイナンスなども有効な場合がある。(カントリーリスクの実例はこちら

最後になったがそれ以外のリスクには顧客の支払いが滞るクレジット・リスク、債務支払い能力(クレジット・レーティング)が下がることによって上がる資金調達コスト、株価下落による企業価値の低下、投資リスク等、財務リスクだけでもあげればきりがないが、大概財務リスクとして議論されるのは、これまで述べてきたものだと思われる。



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2010年7月15日木曜日

財務リスク・マネージメント 2

次に財務リスク・マネージメントの利率リスクについてみていく。

利率リスクとは利率変動により損失が発生するリスクのことである。よって受取利息及び支払利息が発生する資産及び負債において生じる。資産の場合、当座預金や定期預金以外ではMMF(短期金融市場投資信託)などいわゆる「投資」にあたるものが該当する為、一般企業の場合は基本的に負債で発生する支払利息の変動が主なリスクと言える。

借り入れをする場合、貸し手側の金融機関では借り手側の企業審査をすることになるが、その一つにインテレスト・カバレッジ・レシオ(interest coverage ratio)がある。これは利息・税引前利益が支払利息の何倍かを表す比率の事であるが、貸出審査通過には最低限の比率をクリアする必要がある。つまり利率変動によりこの比率が下がれば、貸出マージンが上がったり、或いは急な返済を要求されたりするリスクもある。

また最近の会計法ではマーケット・ツー・マーケット(market-to-market)ベースでの表示が求められる基準もあり(US GAAPなど)、受取利息や支払利息が発生する資産や負債、及びデリバティブなどの金融商品の価値も変動するリスクがある。

すなわちいずれの場合も、企業の価値、収益、キャッシュ・フローに直接影響をあたえるリスクである。

実際に支払利息の発生する負債は借入金(ローン)や当座貸し越し(オーバードラフト)などで、これらの期間、金額、その他の条件によって、金利が決まる。金利には固定金利と変動金利があり、借り入れ時に支払利息が固定される固定金利のほうが利率リスクは回避できるかに見える。確かに今のような不況で利率が低い場合は長期の固定金利は魅力的だが、利率が高い時に固定金利の取引をした場合は利率が下がった時に損をすることになる。典型的な例は日本のバブル時の住宅ローンなどである。また銀行の短期ローンはその時点で金利、支払利息が固定される為、一見利率リスクのない固定金利のように見えるが、実際には銀行の調達コスト(金融市場の変動と連動)にマージンを上乗せしているので、絶えず短期ローンで運転資金を回している場合も、利率リスクを抱えていることになる。また自動車産業のように顧客がローンを組んで車を購入するような場合、企業自身が借入金を持たなくとも利率変動によって顧客の購買意欲が左右されるので、やはり利率リスクを抱えることになる。

ヘッジ方法として代表的なものは、(固定と変動)金利のミックス、フォワード(FRA)、利率キャップ、利率先物、利率オプション、利率スワップなどである。いずれのヘッジ方法も為替リスクと同じで、一長一短あり、残念ながらどれが一番いいヘッジ方法かという答えはないのである。すなわち、企業としてリスクをどうとるかという方針がしっかりしていること、利率変動の予想をどう立てるか、また実際には自らがどのようなリスクを抱えているかと言う分析などが重要になってくる。



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2010年7月9日金曜日

財務リスク・マネージメント 1

前回から引き続き、トレジャリー・マネージメントについてである。ここでは、トレジャリー・マネージメントの一部である財務リスク・マネージメントについて詳しく考察していきたい。

財務リスク・マネージメントは為替リスク、利率リスクそれ以外のリスク、の大きく3つに分けることが出来る。為替リスクはさらに、取引(Transaction)リスク、経済的(Economic)リスク、換算(Translation)リスクに分類できる。

各リスク・マネージメントについてフロリダ・アトランティック大学のジェフ・マデュラ(Jeff Madura)教授の「International Corporate Finance」の本に詳しく書かれているので、この本から内容を紹介しながら見ていきたい。

取引リスク
取引リスクとは、実際に為替取引が行われる時の為替リスクを指す。つまり多通貨で商売していて別の通貨に変換(為替取引)すると、その為替変動によって、手元に残る額が変わるリスクのことである。

取引リスク・マネージメントは、次の3段階のステップを踏むことになる。1.まずどの位の取引リスクが生じるのかを把握し、2.次にその取引リスクをヘッジ(損失回避)するかどうか検討し、3.そして最後に(部分的、又は全面的に)ヘッジする場合はどの方法でヘッジするかを決めるのである。では次にその手順について検討する。

まず多国籍企業がヘッジに関する決定を下す前には「一体どの程度のネット取引リスクが通貨ごとに生じるのか」を把握する必要がある。このネット取引リスクとは、ある時点の全ての将来的お金の入り(インフロー)と払い(アウトフロー)の予想を各通貨ごとに会社全体として連結したものである。その為には各子会社のキャッシュ・フローの的確な予測と、その伝達方法(レポーティング・システム)の管理が重要となる。そのレポートを元に一企業として最終的にどれだけのポジションを持っているかを各通貨ごとに検討するわけである。例えば、子会社Aがユーロの売掛金を持っていて、子会社Bがユーロの買掛金を持っていれば、会社全体としてユーロの取引リスクは相殺される。故に、必ずしも各子会社で取引リスクのヘッジをする必要はないことになる。或いは、売掛金と買掛金の通貨を統一することでも取引リスクを減らすことが出来るのである。このようにお金のインフローとアウトフローで相殺することをマッチングという。

但し今日の多国籍企業では、マッチングだけで取引リスクを完全になくすことができないのが現実である。そこで必要となるのがヘッジである。方法としてヒューチャー、フォワード、マネー・マーケット、カレンシー・オプションなどである。これらの仕組みについては詳しくここでは触れないが、実際にそのヘッジ方法がどれだけ有効であるか?ということである。例えば、フォワードでは契約時に取引日のレートを前もって固定することが出来るが、実際の取引日に為替レートが動いていれば、ヘッジしない方が良かった、ということもある(この確率の計算方法はこちら)し、そういう状況を避ける為にカレンシー・オプションを使ったとしても果たしてそのコストに見合うだけの見返りがあるのか?などということである。これまで銀行で色々な企業のヘッジ方法を見てきたが、最終的には各会社がどれだけのリスクをどのように取るかという方針によってヘッジ方法はそれぞれ異なるし、結局のところ、正しいヘッジ方法などと言うものは存在しないのである。

経済的リスク
経済的リスクとは、為替変動によって経済が影響され、それが最終的に企業の将来的キャッシュ・フローに与えるリスクを指す。例えば日本円が米ドルより強くなった場合、日本からアメリカへの輸出が減る。アメリカでの需要が減ることで輸出していた日本企業売り上げが将来的に下がることになる。このように為替変動による経済的な影響によってキャッシュ・フローが影響を受けるリスクのことを経済的リスクと言う。

経済的リスクは、為替変動が直接的影響を及ぼす取引リスクとは違い、間接的、将来的に影響を及ぼすリスクである為、単純に外国通貨での売掛金や買掛金の管理をするのではなく、為替変動が全体的なキャッシュ・フローに及ぼす影響を把握する必要がある。

実際には損益計算書を分析することで、詳細が明確になる。売り上げ、売上原価、営業費用、受け取り&支払い利息を各通貨ごとに割り出し、為替変動によってどの位それらの項目が影響を受けるのかというシナリオ分析である。その結果によって、例えば米ドル売り上げを減らすとか、ユーロ仕入れを増やすとか、借り入れ通貨を円建てにする、などの具体的な対応策が検討できるわけである。

さらに、部門ごとのキャッシュ・フローを月ごとに出し、通貨の変動幅と比べる方法(回帰分析)もある。この方法で、キャッシュ・フローが為替変動に影響されるかどうか、されているのならどの程度が影響されるのか、などが具体的に分析できる。例えば、日本円で日本の顧客にコンピューターを売っていても、米ドルの為替変動で売り上げが左右されるのであれば、米ドル資本のコンピューター会社が競合である、ということもはっきりするのである。

代表的な対応策としては、売上価格変更、フォワード契約、仕入先の通貨&地域の変更、借り入れ通貨の変更、営業方法の変更などがあげられる。但し、売り上げのコントロールは簡単ではないし、経済的リスク軽減の為だけに簡単に仕入れ業者を変えたり、部門や支店を越えて関係のない外国通貨の借り入れなどは出来ないわけであるから、経済的リスク・マネージメントはなかなか出来にくいのが現実である。

換算リスク
換算リスクとは、外国にある子会社の現地通貨建て財務諸表を連結する場合、自国通貨に換算しなおさなければならないが、その時に発生する為替リスクを指す。つまり為替変動によって連結財務諸表の数字が変わるリスクのことである。

実際に他通貨の価値が下がると思われる場合は、フォワード契約をすることで、簡単にこのリスク・ヘッジをすることが出来る。例えば子会社の利益が10百万ユーロとして、その年ユーロが日本円より弱くなると予想した場合、会計年度最終日を取引日として10百万ユーロを売るフォワード契約をする。これが仮に1ユーロ=150円だったとする。一方で会計年度最終日にその10百ユーロをスポット契約で買う契約をしたとして、これが1ユーロ=120円だったとする。すると
 
フォワード
10百万ユーロ(Sell)x150=1,500百万円(Buy)
 
スポット
10百万ユーロ(Buy)x120=1,200百万円(Sell)
 
となり、1,200百万円を払って10百万ユーロを買い、その10百万ユーロを売って1,500百万円を得て、最終的に1,500百万円-1,200百万円=300百万円を受け取るという流れができる。つまり為替レートが下がって子会社の利益が会計上1,200百万円に下がったとしても、このフォワードとスポット取引の差益でその分が賄えるということである。
 
とは言っても実際には、子会社の利益を前もって正確に推測することは不可能であるし、全ての通貨でフォワード契約できるとは限らないし、会計上の為替レートとヘッジ・レートは異なる上、換算ロスは損金算入できるが、為替利益は課税対象になり、さらに為替レートが上がった場合、会計上の換算利益はあくまで会計上のものだが、ヘッジ上の損失は実際のキャッシュ・フローに影響することとなり、換算リスクが減っても取引リスクが増えることになる等障害は多く、そう簡単にリスク・ヘッジができないのが現状である。

為替リスクヘッジの実例はこちらより。



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2010年7月3日土曜日

コーポレート・ファイナンス

キャッシュ・マネージメントとは、トレジャリー・マネージメントの一部をなす。ではトレジャリー・マネージメントとは何を指すのか?今回は、トレジャリー・マネージメントについて、書いてみようと思う。

イギリスの企業財務担当者組合(The Association of Corporate Treasurers)の定義によると「企業トレジャリーとは、企業財務の戦略、及びポリシーを決める重要な鍵であり、何のビジネスに投資するか、その資金調達方法、及びそのリスク管理などを助言すること」とある。つまりビジネスの流動性と財務リスクを効率的に管理することと言えるだろう。

では実際にはその為にどのようなことが必要なのだろうか?それぞれ考え方によってそのカテゴリー分けは様々だが、大体においてコーポレート・ファイナンス、財務リスク・マネージメント、運転資金マネージメント、銀行関連、キャッシュ・マネージメントに分けることが出来ると思う。ではこれから各カテゴリーごとに細かく見ていきたい。

まずはコーポレート・ファイナンスである。文字通り、如何に企業(コーポレート)をファイナンスするか?ということである。実際には資本でファイナンスするか?それとも負債でファイナンスするか?と言うところから始まって、増資をするのか、銀行借り入れにするのか、社債を発行するのか、など色々な方法があるが、ここではそれを決めるのに知っておきたい理論について書いてみたいと思う。

まず資本か負債かと言う議論で一番に考えないといけないのは資本構成である。前回にも書いた通り、最適な資本構成を考えるにあたって元となるのが「資本はリスクが低くてコストが高く、負債はコストが安くてリスクが高い」というトレード・オフ(二律相反)論である。さらにこの理論に含まれるのは、損益計算書(P/L)上、負債の金利コストは税引前の利益から差し引くことが出来ることから税金分さらにお得である、と言う考え方である。

またギアリングといって、自己資本を使って投資するより、負債を使って投資した方がリターンが増えるという考え方もある。分かりやすく例を使うと、次のようになる。

A社とB社という会社があるとする。どちらの会社も300の投資をしたとする。但し、A社は資本100とローン200で、B社は資本200とローン100の割合とする。この投資から50の売り上げがあったとして、金利が10%、税金が30%の場合、税引き後の(配当可能な)収益は次のようになる。

A社
50-20(ローン金利)=30
30-9(税金: 30x30%)=21

B社
50-10(ローン金利)=40
40-12(税金: 40x30%)=28

当然A社のほうがローン金額が高いので、その金利支払い分、最収益は減る。但しこれを投資した額に対するリターンとして計算すると

A社
21 / 100 = 21%

B社
28 / 200 = 14%


で、A社のほうがリターンが高くなるのである。つまり、少ない投資でより高いリターンを求めると、資本より負債を使ったほうが良いということである。
 
次にマッチングを紹介する。その名の通り、「資産」と「資本&負債」をマッチング(組み合わせ)することである。資産には固定資産と流動資産があり、固定資産は土地や建物のように簿記上は金額がほぼ固定されているものである。流動資産はその名前のせいか変動すると思われているが、よくみると変動する流動資産とあまり変動しない流動資産に別れる。例えば売掛金や在庫の一部は絶えず存在していて、これらは変動しない流動資産といえる。一方で、大口の売り上げがあったりすると売掛金も在庫も変動するし、現金も給料支払いなどまとめてすると変動する。このマッチング論では固定資産、及び変動しない流動資産については長期負債か資本でファイナンスして、変動しやすい流動資産の部分だけ短期負債でファイナンスするという考え方である。
 
最後は理論と言うより、実務レベルで採用されている傾向と言えるが、ペッキング・オーダー(序列)と呼ばれるものである。これが何かと言うと、資金を外から調達する前に社内で調達すると言うものである。要は、銀行借り入れをする前に親子ローンで解決するいうことである。但しここにも落とし穴があって、通貨が違ったり、国が違ったりすると、為替リスクが生じたり、国の規制で現地で資金調達せざるを得ない場合もあるので、実際には必ずしもこの順序でと言うわけにはいかない。
 
以上が主要な理論である。とはいえ、理論はあくまで理論であり、実際もっと様々な要素が絡み合う現実では、あくまで参考程度に知っておけばよい知識かもしれない。



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2010年7月2日金曜日

ファイナンシャル・マネージメント

キャッシュ・マネージメントはトレジャリー・マネージメントの一部であり、トレジャリー・マネージメントはファイナンシャル・マネージメントの一部である。ではファイナンシャル・マネージメントとは一体何なのか?

貸借対照表、つまりバランス・シートは、資産と資本&負債がバランスすることから、バランス・シートと呼ばれる。これを西洋式(ビジネス・スクール式?)に表現すると「会社資産が何で構成されているかを表す一覧表」ということになる。つまり、資本と負債がどの割合で構成されているかという資本構成(キャピタル・ストラクチャー)をあらわすのである。では、なぜ資本構成が重要なのだろうか?

この重要性は資本と負債のコストとリスクを考えれば分かりやすい。例えばどこかの会社の株を買って株主になるとする。その場合、株主は当然銀行に預ける金利より高いリターンを期待して株に投資するのである。この高いリターンとは株価の上昇、及び配当金である。つまり、会社は株主に出してもらった資本を有効に使って、会社の価値と収益を上げ、株主に還元しなくてはならない義務があるのである。もっとはっきり言えば、銀行から借りたローンに金利というコストがあるのと一緒で、資本も会社にとってはコストなのである。それも銀行金利より高いリターンを求められる高額なコストである。

では負債のほうが安上がりだからと、負債だけで会社は成り立つだろうか?この状態は、収益力がなくて借金だらけの会社、いわゆる債務超過の状態である。言い換えれば、倒産間近で会社存続が危ぶまれる状態である。つまり、負債が増えればデフォルト・リスクも増えるのである。

結論として、会社にとって「資本はリスクが低くてコストが高く、負債はコストが安くてリスクが高い」ということになり、資本と負債のリスクとコストは反比例(トレード・オフ/二律相反)するということである。すなわち会社経営においてのファイナンシャル・マネージメントの究極論は、いかにコストとリスクのバランスをとって最適な資本構成を作るか、ということである。



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2010年7月1日木曜日

歴史的背景

昨今「キャッシュ・マネージメント」という言葉は、財務担当者にとって当たり前の専門用語として日本語に訳される事もなく使われる。一体「キャッシュ・マネージメント」とは何を指すのか、なぜ必要なのか、この辺りを理解するのに必要な歴史的背景をまずは簡単に書いてみたいと思う。

1929年の世界恐慌後、各国が植民地を抱え込んで、ブロック経済(英ポンド、仏フラン、米ドル、日本円)圏を促進させた。関税障壁によりブロック外へ需要が漏れない(つまり保護貿易主義)ことから、各経済圏が分断され、第二次世界大戦へとつながる。この反省、及び戦争による疲弊した世界経済安定化を目的として、俗に言うブレトン・ウッズ協定(United Nations Monetary and Financial Conference)が締結され、国際通貨基金(IMF)や国際復興開発銀行(IBRD)の設立、及び関税および貿易に関する一般協定(GATT)の発足が決まった。GATTは「自由貿易=円滑な国際貿易」の実現を目的に、ジュネーブ・ラウンドから始まり、ケネディ・ラウンドやウルグアイ・ラウンドなどの8貿易交渉を経て、1995年に世界貿易機関 (WTO) 協定の一部になった。つまり、第二次世界大戦の一因となった保護貿易主義の反省から自由貿易が促進され、その安定した利益が先進工業国全体の経済を改善し、世界経済は劇的な高度成長を実現したのである。また自由貿易の促進、及び世界経済の活性化に伴い、様々な形での国際化(グローバリゼーション)が始まることとなる。その一つが企業のグローバリゼーションである。例えば、1970年代や80年代に多国籍企業として成長し始めたのが、米国のジェネラル・モータース(車)や、英蘭合併のユニレバー(食品&生活雑貨)や、日本のソニーなどである。

企業の国際化に伴い必要とされ始めたのが効率化である。世界各地に拠点を作り、そこでそれぞれビジネスを始めれば、当然資金調達の必要性も出るし、売掛金や買掛金も発生するわけである。グループ内取引で発生する売掛金と買掛金の相殺をすることで、グループ内のキャッシュ・フローを単純化しようと1960年代にアメリカでまずはネッティングが始まった。また必要資金をグループ内で調達するグループローンの効率化が始まり、1990年代にはスィープやプーリングと呼ばれる銀行商品が多国籍企業内で採用されることになる。1999年には欧州統一通貨のユーロが発足し、これまでは米ドル中心だった効率化がユーロでも可能となり、欧州を中心にこれらの効率化がさらに加速されることになった。

このことからも分かるように、キャッシュ・マネージメントとは多国籍企業で主に採用されている流動資産管理の一環で、キャッシュ・フローの単純化、キャッシュ・バランスの管理、及び超過資本の効率的な投資(金融商品への投資だけではなく、広義でのビジネスへの還元投資)などを指す。

また蛇足になるが、効率化といえばサプライチェーン・マネージメントやストック・コントロールなどもこれらの効率化現象の一部に当たる。この「効率化=集中管理」が今日の多国籍企業のトレンドである。なぜなら集中管理することで事務の効率化、すなわち人件費も含めたグループ内のさまざまな無駄を最小限に出来ること、また集中管理=社内プロセスの透明化となり、2001年のエンロン不正取引以降SOX法などで強化されているリスク・マネージメントにも貢献できるからである。



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2010年6月30日水曜日

始めに

銀行で「キャッシュ・マネージメント」と言えば、プーリングなどの国際企業向け商品を指す。ひょんなことから日系銀行でその商品に携わることになった。自分ではそこで得た知識がそんなにすごいものとは思っていなかったが、外資系銀行に行ってもその知識が通用することに驚いた。なぜなら、「外資系銀行はものすごい投資をして、すごいシステムを構築しているに違いない」と勝手に思い込んでいたからだ。ところが蓋を開けてみたら、基本はどこも同じということだった。結局のところ、問題になる規制、銀行内でのお金の動き(といっても実際にはSWIFTのメッセージのやり取りだけだが)、効率的なキャッシュ・マネージメントの理論など、大体どこも同じだからである。ところが、これが意外と知られていないし、公表されてないことに気が付いたのが、修士論文を書いていた時であった。

2006年から2年かけてビジネススクールで主に財務の勉強をし、修士論文は自分の今後も考えてインターナショナル・キャッシュ・マネージメントについて書くことにした。ところが書き始めてすぐ壁にぶち当たってしまった。なぜなら関係資料があまりに乏しかったからである。ビジネススクールでは、「普通の大学院と違い、実践を基礎にした学問を勉強する」と言う建前になっているが、最終的には実践にかかわる主題で、学術的理論を書かないと修士号はもらえないのだ。マーケティングや、M&Aなどの分野に関しては色んな理論やリサーチがあるが、「キャッシュ・マネージメント」になると殆どない。しかもたまたま見つけても、議論にならないようなお粗末な内容、或いは大昔に企業が実践していた例しか出てこない。「もしかして、自分が普段関わっている仕事内容のほうがよっぽど進んでいるのかもしれない」と。

実際、論文には理論が必要なので、キャッシュ・マネージメントに関する本や記事を色々探し出して読んでみたが、そういう理論のほうは、商品を売ることに専念する銀行では意外と知られていないことが多かった。勿論、私が無知だっただけかもしれないが・・・。一方で、企業が今日現在実践していることも意外と公表されていない。銀行のセールスをしていて感じたのは、どこの財務担当者も『他社が何をやっているのか知りたい』のではないかと。結局、論文は少ない理論をベースによく知っている企業の財務担当者に現状のインタビューをして仕上げたので、たいしたものにはならなかったが、そのインタビューの終わりにとある人から言われたのは「今回、書いたことを本にしてみれば?」だった。

確かに苦労して書いた(途中、担当教授には「まだビルから飛び降りてない?」と聞かれたこともある)論文を形として残すのも悪くないと思いながらも、転職や病気やらでそのままになっていた。実際に論文にかなり貢献してもらった本は日本語訳にしたらすごい人気になるのではないか?と勝手に思ってその打診もしてみたが、出版元の銀行を辞めてしまったこと、組織変更の最中で翻訳の経費が出そうもないことで、そちらもお預け状態が続いていた。それならば限られた範囲ではあっても、自分のキャッシュ・マネージメントの知識や現状、役に立ちそうな本の内容を紹介する、と言う形でまずは書き始めてみようと思い、このブログを始めることにした。但し、中には職務中に得ることができた情報も入っているので、その辺は分からないように実名などは伏せて書かせて頂くことにする。



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2010年6月29日火曜日

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2010年6月28日月曜日

お勧めの本

残念ながら、これまで書いてきた内容は全て英語の文献を参考にしている。英語でお勧めしたい本はたくさんあるのだが、これまでも「それを読む時間がないから」と言われてきているので、日本語で似た内容の本を探してみた。

この[新版]グロービスMBAファイナンスはそのタイトル通り、ビジネススクールで使われるテキストの内容に限りなく近い。当然、本1冊に収まる内容には限りがあるので、「ファイナンス」の一部について触れてあるだけだが、西洋式の経営学にご興味をお持ちの方にはぜひグロービズのMBAシリーズをお勧めしたい。




2010年6月20日日曜日

セミナー&資格取得講座などの情報

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