2010年10月25日月曜日

運転資金マネージメント2

前回述べた通り、運転資金がプラスであっても流動性の質が問われる、という部分をさらに掘り下げてみたいと思う。

流動性という意味では、バランスシートの上から順に、下に行くほど流動性が高い。つまり、在庫よりも売掛金が、売掛金よりも現金の方が流動性が高いことになる。すなわち、いかに早く在庫を売掛金にし、売掛金を現金にするか、ということが重要となってくるのである。この現金化されるまでの期間のことをキャッシュ・コンバージョン・サイクル(Cash Conversion Cycle = CCC)という。

このCCCはサプライヤーから購入して支払うまでの期間、顧客からオーダーを受けてからその支払いを受け取るまでの期間、及び、原料を受け取ってから最終商品を顧客へ届けるまでの在庫期間によって決まる。分かりやすく言うと、「在庫期間をなるべく短くし、顧客からは売掛金をなるべく早く回収し、買掛金は支払期日のぎりぎりする」ということである。

例えば、在庫期間を短くする為に考えられた代表的なのがジャスト・イン・タイム・システムである。原料が必要になるその時にぴったりあわせてサプライヤーに原料を配達してもらう、というシステムである。この辺はストック・コントロールの分野にあたる。また支払いについては、受け取るほうも、払うほうも、支払い条件、方法、期間などが鍵となってくる。

ちなみに支払いを効率的にする為に考えられたのがペイメント・ファクトリーやネッティングである。ペイメント・ファクトリーはその名の通り、グループ会社の支払いをペイメント・ファクトリーで纏めてするというものであり、ネッティングは各支払いを相殺して、差額(ネット)分だけ決済するというものである。

ここからは会計分野になってくるが、実際のCCC計算方法を紹介する。

CCC=在庫回転期間+債権回転期間-支払勘定回転期間

在庫回転期間 = 在庫平均 / 売上原価 X 365
債権回転期間 = 売掛金平均 / 信用販売 X 365
支払勘定回転期間 = 買掛金平均 / 信用購入 X 365

では例を使って計算していく。

右の例は必要な数字だけBS及びPLから抜き出したものである。便器上、売上は全て信用販売、原料の購入は全て信用購入とする。

在庫平均 = (300 + 406) / 2 = 353
在庫回転期間 = 353 / 2,272 X 365 = 56.7日

売掛金平均 = (240 + 273) / 2 = 256.5
債権回転期間 = 256.5 / 2,681 X 365 = 34.9日

買掛金平均 = (221 + 314) / 2 = 267.5
信用購入額 = 2,272 + 406 - 300 = 2,378
支払勘定回転期間 = 267.5 / 2,378 X 365 = 41.1日

CCC = 56.7 + 34.9 - 41.1 = 50.5日

つまりこの例に使った会社は原料が使える現金化されるまでに平均50.5日かかるということである。



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