まずは何もしていない状態の多国籍企業の財務状況を想像して頂きたい。多地域でそれぞれの財務担当者がそれぞれのオペレーションに必要な資金管理をしているとすると、分散されたマニュアル・オペレーションは企業にとって運転資金のコントロールが効きにくいという事を意味し、最終的に企業の流動性へ少なからず影響を与える。これを解消する為に考えられたのが前回でも述べたキャッシュ・マネージメントの集中化である。
この集中管理をする為の銀行商品がいわゆるプーリングやスィープなどと呼ばれるものである。実際にプーリングは、多通貨のキャッシュ・ポジションを自動管理できる為、コスト削減ができる効率的な運転資金管理ツール、又は流動性管理ツールなどと言われる。
ではこの様なシステムを必要とするのは一体どんな企業なのか?実際に銀行がターゲット顧客としているのは、多国籍企業で拠点が世界中にあり、多地域にプラスとマイナス両方のキャッシュ・ポジションをもっている企業である。これらの大企業が導入した際のリサーチでは、為替及び送金手数料のおよそ1.5%が削減できたという結果や、6ヶ月でシステム導入費用を取り戻せるなどという結果もある。しかしながら近年のリスク・マネージメント強化の風潮から、財務効果がなくとも管理体制の観点から導入している企業も増えているのが事実である。
実際に銀行側も、昨今の情報技術や電気通信などの発達により、これらの商品をより洗練されたものに開発してきている。例えば、多通貨を纏めて管理(相殺)できる多通貨プーリング、参加地域の拡大(東欧、アジアなど)、自動機能の拡大、などが最近目立ってきている傾向である。これは多国籍企業がますますグローバル化し、扱う通貨や地域が拡大していること、そのニーズがさらに高まっていること、またその影響か外為法や税法の簡素化、または国際共通化などが理由として考えられる。
では次回はそのメカニズムについて触れたいと思う。
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