2010年6月30日水曜日

始めに

銀行で「キャッシュ・マネージメント」と言えば、プーリングなどの国際企業向け商品を指す。ひょんなことから日系銀行でその商品に携わることになった。自分ではそこで得た知識がそんなにすごいものとは思っていなかったが、外資系銀行に行ってもその知識が通用することに驚いた。なぜなら、「外資系銀行はものすごい投資をして、すごいシステムを構築しているに違いない」と勝手に思い込んでいたからだ。ところが蓋を開けてみたら、基本はどこも同じということだった。結局のところ、問題になる規制、銀行内でのお金の動き(といっても実際にはSWIFTのメッセージのやり取りだけだが)、効率的なキャッシュ・マネージメントの理論など、大体どこも同じだからである。ところが、これが意外と知られていないし、公表されてないことに気が付いたのが、修士論文を書いていた時であった。

2006年から2年かけてビジネススクールで主に財務の勉強をし、修士論文は自分の今後も考えてインターナショナル・キャッシュ・マネージメントについて書くことにした。ところが書き始めてすぐ壁にぶち当たってしまった。なぜなら関係資料があまりに乏しかったからである。ビジネススクールでは、「普通の大学院と違い、実践を基礎にした学問を勉強する」と言う建前になっているが、最終的には実践にかかわる主題で、学術的理論を書かないと修士号はもらえないのだ。マーケティングや、M&Aなどの分野に関しては色んな理論やリサーチがあるが、「キャッシュ・マネージメント」になると殆どない。しかもたまたま見つけても、議論にならないようなお粗末な内容、或いは大昔に企業が実践していた例しか出てこない。「もしかして、自分が普段関わっている仕事内容のほうがよっぽど進んでいるのかもしれない」と。

実際、論文には理論が必要なので、キャッシュ・マネージメントに関する本や記事を色々探し出して読んでみたが、そういう理論のほうは、商品を売ることに専念する銀行では意外と知られていないことが多かった。勿論、私が無知だっただけかもしれないが・・・。一方で、企業が今日現在実践していることも意外と公表されていない。銀行のセールスをしていて感じたのは、どこの財務担当者も『他社が何をやっているのか知りたい』のではないかと。結局、論文は少ない理論をベースによく知っている企業の財務担当者に現状のインタビューをして仕上げたので、たいしたものにはならなかったが、そのインタビューの終わりにとある人から言われたのは「今回、書いたことを本にしてみれば?」だった。

確かに苦労して書いた(途中、担当教授には「まだビルから飛び降りてない?」と聞かれたこともある)論文を形として残すのも悪くないと思いながらも、転職や病気やらでそのままになっていた。実際に論文にかなり貢献してもらった本は日本語訳にしたらすごい人気になるのではないか?と勝手に思ってその打診もしてみたが、出版元の銀行を辞めてしまったこと、組織変更の最中で翻訳の経費が出そうもないことで、そちらもお預け状態が続いていた。それならば限られた範囲ではあっても、自分のキャッシュ・マネージメントの知識や現状、役に立ちそうな本の内容を紹介する、と言う形でまずは書き始めてみようと思い、このブログを始めることにした。但し、中には職務中に得ることができた情報も入っているので、その辺は分からないように実名などは伏せて書かせて頂くことにする。



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