2010年7月3日土曜日

コーポレート・ファイナンス

キャッシュ・マネージメントとは、トレジャリー・マネージメントの一部をなす。ではトレジャリー・マネージメントとは何を指すのか?今回は、トレジャリー・マネージメントについて、書いてみようと思う。

イギリスの企業財務担当者組合(The Association of Corporate Treasurers)の定義によると「企業トレジャリーとは、企業財務の戦略、及びポリシーを決める重要な鍵であり、何のビジネスに投資するか、その資金調達方法、及びそのリスク管理などを助言すること」とある。つまりビジネスの流動性と財務リスクを効率的に管理することと言えるだろう。

では実際にはその為にどのようなことが必要なのだろうか?それぞれ考え方によってそのカテゴリー分けは様々だが、大体においてコーポレート・ファイナンス、財務リスク・マネージメント、運転資金マネージメント、銀行関連、キャッシュ・マネージメントに分けることが出来ると思う。ではこれから各カテゴリーごとに細かく見ていきたい。

まずはコーポレート・ファイナンスである。文字通り、如何に企業(コーポレート)をファイナンスするか?ということである。実際には資本でファイナンスするか?それとも負債でファイナンスするか?と言うところから始まって、増資をするのか、銀行借り入れにするのか、社債を発行するのか、など色々な方法があるが、ここではそれを決めるのに知っておきたい理論について書いてみたいと思う。

まず資本か負債かと言う議論で一番に考えないといけないのは資本構成である。前回にも書いた通り、最適な資本構成を考えるにあたって元となるのが「資本はリスクが低くてコストが高く、負債はコストが安くてリスクが高い」というトレード・オフ(二律相反)論である。さらにこの理論に含まれるのは、損益計算書(P/L)上、負債の金利コストは税引前の利益から差し引くことが出来ることから税金分さらにお得である、と言う考え方である。

またギアリングといって、自己資本を使って投資するより、負債を使って投資した方がリターンが増えるという考え方もある。分かりやすく例を使うと、次のようになる。

A社とB社という会社があるとする。どちらの会社も300の投資をしたとする。但し、A社は資本100とローン200で、B社は資本200とローン100の割合とする。この投資から50の売り上げがあったとして、金利が10%、税金が30%の場合、税引き後の(配当可能な)収益は次のようになる。

A社
50-20(ローン金利)=30
30-9(税金: 30x30%)=21

B社
50-10(ローン金利)=40
40-12(税金: 40x30%)=28

当然A社のほうがローン金額が高いので、その金利支払い分、最収益は減る。但しこれを投資した額に対するリターンとして計算すると

A社
21 / 100 = 21%

B社
28 / 200 = 14%


で、A社のほうがリターンが高くなるのである。つまり、少ない投資でより高いリターンを求めると、資本より負債を使ったほうが良いということである。
 
次にマッチングを紹介する。その名の通り、「資産」と「資本&負債」をマッチング(組み合わせ)することである。資産には固定資産と流動資産があり、固定資産は土地や建物のように簿記上は金額がほぼ固定されているものである。流動資産はその名前のせいか変動すると思われているが、よくみると変動する流動資産とあまり変動しない流動資産に別れる。例えば売掛金や在庫の一部は絶えず存在していて、これらは変動しない流動資産といえる。一方で、大口の売り上げがあったりすると売掛金も在庫も変動するし、現金も給料支払いなどまとめてすると変動する。このマッチング論では固定資産、及び変動しない流動資産については長期負債か資本でファイナンスして、変動しやすい流動資産の部分だけ短期負債でファイナンスするという考え方である。
 
最後は理論と言うより、実務レベルで採用されている傾向と言えるが、ペッキング・オーダー(序列)と呼ばれるものである。これが何かと言うと、資金を外から調達する前に社内で調達すると言うものである。要は、銀行借り入れをする前に親子ローンで解決するいうことである。但しここにも落とし穴があって、通貨が違ったり、国が違ったりすると、為替リスクが生じたり、国の規制で現地で資金調達せざるを得ない場合もあるので、実際には必ずしもこの順序でと言うわけにはいかない。
 
以上が主要な理論である。とはいえ、理論はあくまで理論であり、実際もっと様々な要素が絡み合う現実では、あくまで参考程度に知っておけばよい知識かもしれない。



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