2010年7月15日木曜日

財務リスク・マネージメント 2

次に財務リスク・マネージメントの利率リスクについてみていく。

利率リスクとは利率変動により損失が発生するリスクのことである。よって受取利息及び支払利息が発生する資産及び負債において生じる。資産の場合、当座預金や定期預金以外ではMMF(短期金融市場投資信託)などいわゆる「投資」にあたるものが該当する為、一般企業の場合は基本的に負債で発生する支払利息の変動が主なリスクと言える。

借り入れをする場合、貸し手側の金融機関では借り手側の企業審査をすることになるが、その一つにインテレスト・カバレッジ・レシオ(interest coverage ratio)がある。これは利息・税引前利益が支払利息の何倍かを表す比率の事であるが、貸出審査通過には最低限の比率をクリアする必要がある。つまり利率変動によりこの比率が下がれば、貸出マージンが上がったり、或いは急な返済を要求されたりするリスクもある。

また最近の会計法ではマーケット・ツー・マーケット(market-to-market)ベースでの表示が求められる基準もあり(US GAAPなど)、受取利息や支払利息が発生する資産や負債、及びデリバティブなどの金融商品の価値も変動するリスクがある。

すなわちいずれの場合も、企業の価値、収益、キャッシュ・フローに直接影響をあたえるリスクである。

実際に支払利息の発生する負債は借入金(ローン)や当座貸し越し(オーバードラフト)などで、これらの期間、金額、その他の条件によって、金利が決まる。金利には固定金利と変動金利があり、借り入れ時に支払利息が固定される固定金利のほうが利率リスクは回避できるかに見える。確かに今のような不況で利率が低い場合は長期の固定金利は魅力的だが、利率が高い時に固定金利の取引をした場合は利率が下がった時に損をすることになる。典型的な例は日本のバブル時の住宅ローンなどである。また銀行の短期ローンはその時点で金利、支払利息が固定される為、一見利率リスクのない固定金利のように見えるが、実際には銀行の調達コスト(金融市場の変動と連動)にマージンを上乗せしているので、絶えず短期ローンで運転資金を回している場合も、利率リスクを抱えていることになる。また自動車産業のように顧客がローンを組んで車を購入するような場合、企業自身が借入金を持たなくとも利率変動によって顧客の購買意欲が左右されるので、やはり利率リスクを抱えることになる。

ヘッジ方法として代表的なものは、(固定と変動)金利のミックス、フォワード(FRA)、利率キャップ、利率先物、利率オプション、利率スワップなどである。いずれのヘッジ方法も為替リスクと同じで、一長一短あり、残念ながらどれが一番いいヘッジ方法かという答えはないのである。すなわち、企業としてリスクをどうとるかという方針がしっかりしていること、利率変動の予想をどう立てるか、また実際には自らがどのようなリスクを抱えているかと言う分析などが重要になってくる。



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