2010年8月3日火曜日

カントリー・リスクの実例

実際に通貨に関する規制は財務担当者の頭痛の種である。例えば露ルーブルなど典型的な例であるが、2年前の銀行でかかわった時には露ルーブルの国外持ち出しは禁止、ロシア外からの資金調達も禁止、おまけに外貨の利息受取はロシアの銀行を通さないといけないとか、それはそれは細々と色々な規制が存在した。言ってみればロシア政府の考え方は、「ロシア内でビジネスをするにはその利益を100%ロシアに還元しろ」ということに尽きると思われる。その規制の目をかいくぐって色々知恵を絞ったものである。とある企業は弁護士や会計士を使ってありとあらゆる質問をつくり(勿論、自分達がやりたい方向性に誘導するものであることは言うまでもない)、その正式回答を何かあった時の為の保険として一応逃げ場を作ってから、資金移動スキームを作っていた。

さらにその時に聞いた話であるが、ロシアの税務署では不正をみつけていくら罰金を課したかによって、その税務所役人のその年のボーナスが決まると言う、冗談のような話もあるらしい。では実際にはどうなるかというと、とにかく色々難癖をつけて罰金を取り立てるそうである。最終的に企業は納得がいかず不服を申し立て、結局全部罰金を取り戻すと言う構図が成り立つ。役人もそこのところを知っているから、自分のボーナスアップの為に当たり前のように罰金を請求してくるらしく、怒る気も失せる様な話である。

またとある企業は船舶関係であったが、大体船はギリシアがらみが多いようである。いわゆる船のキャプテンとやらがギリシア人ということである。そうすると公然と袖の下を要求されるそうである。勿論渡さないと仕事にならないが、そのような現金に請求書や受領書がもらえるわけでもなく、いかに処理するかがその会社にとっては問題であった。仕方なく税務署にその理由を説明し、毎年いくらまでなら賄賂として処理してもよいか金額を設定してもらったという嘘のような本当の話である。

またあるIT関連の企業はインドにかなり大きい子会社を持っていた。インドもまたロシアと同じく通貨の移動が難しい所で有名である。ただこの企業の場合はそうとう大きい子会社でかなりの雇用をインドで生み出しており、その自負もあった。つまりこの企業とインド政府の関係は企業として政府に圧力がかけれる位(と実際にその財務担当者が言っていたそうだが、そこには白人優位主義があるのではないかと思うのは私がアジア人だからだろうか・・・)であり、結局規制の例外を堂々と取り付けていた。この辺の交渉の図々しさ(?)を謙虚な日本人はもっと見習ってもいいのかもしれない。

あと周知の事実がアジア内での不法コピーである。一時期安い労働力を求めて全てを中国の工場に移し、最終的に最新技術をコピーされて多大な損害を受けた日本企業は、最新製品は日本での生産に戻したと言う話も聞くが、デジタルのコピーは防ぎようがない。例えばマイクロソフトの最新ウインドウズなど発売されてしまえば簡単にコピーできてしまうからである。これらの不法コピーによる売り上げのロスは毎年相当額(ソフトウエアだけで毎年3000億ドル強のアジア内の売り上げロスとか?)になるそうである。日本のアニメなども同じように不法コピーされインターネットで垂れ流し状態になっているが、一方でそのおかげで国際的な日本アニメブームを生み出したという反論もある。その真偽はともかく、コピーできてしまう商品の場合、不法コピーを取り締まるより別のビジネスモデル(例えばiTunesなどで簡単だが安価でCDやビデオなどダウンロードできるシステムなど)を考える時期に来ているともいえる。



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